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専門誌「財ラボ」2026年10月号 財ラボ Vol.23|旬の財政 旬の財政|財政課とゼロ債務負担行為「ゼロ債務負担行為」とは、契約初年度に支出を伴わない債務負担行為です。 新年度予算に計上する工事や設計業務について、今年度の補正予算で債務負担行為を設定し、1〜2月に契約します。 工事費を抑えるのではなく、施工時期を平準化する手法です。 今回は財政運営上の利点を2つ紹介します。 第一に、予算額と予定価格のズレを抑えられます。 原課の積算は秋、予算成立は3月、入札は5月下旬~6月初旬です。 この間に公共工事設計労務単価が改定されます(2月公表・3月適用、14年連続上昇)。 新単価で再積算すると予定価格が予算額を超え、予算措置や仕様調整が必要な場合があります。 「ゼロ債務」なら、現行単価で予定価格を組み、発注できます。 第二に、繰越リスクを抑え、予算を計画的に執行しやすくなります。 年度内に施工計画の提出や資材確保を済ませれば、4月1日から着工でき、工期を確保しやすくなります。 繰越明許などの事務軽減も期待できます。 ただし、改定前の単価で契約する以上、着工後の単価上昇への対応が必要です。 契約約款のスライド条項のうち、工期の長い工事を対象とするものは、翌年度内に完成するゼロ債務では条件が合いません。 労務単価の急騰にはインフレスライドで対応しますが、適用には発注者の運用基準が必要です。 令和6年の品確法改正で、策定は公共発注者の責務とされました。 しかし令和7年6月1日現在、基準を持つ市区町村は6割です。 基準がなければ、増額の算定や判断が難しくなります。 策定と公表は発注前に済ませたいところです。 制度を整えても、前倒しできる案件は原課にしか分かりません。 この秋の予算ヒアリングで、設計・用地取得・関係機関協議の進捗と、入札の見通しを確認してはいかがでしょうか。 財ラボ Vol.23|NEWS TOP5 行財政関連NEWS TOP5行財政関連のビッグニュースを厳選してお伝えします。 1 実質公債費比率が18%を超え起債許可団体に、25%超えも?(兵庫県) 震災復興債の償還に加え、高水準の公共投資や県債管理基金の積立不足、臨財債の返済負担増、金利上昇などが重なった。実質公債費比率は24%台まで上昇する見込みで、25%の早期健全化基準も視野に入る。 2 地域少子化対策重点推進交付金10億円を廃止へ(こども家庭庁) 2013年度に創設された交付金だが、2015年の行政事業レビュー以来、定量的検証不足を繰り返し指摘されてきた。10年以上の実績にもかかわらずエビデンスが不十分として、ついに継続は認められないとされた。 3 新市長が財政緊急対策・再建宣言を発出。全事業を総点検(埼玉県久喜市) 2025年10月の中期財政計画で2030年度末の財政調整基金残高を約14億円と見込んでいたが、1年足らずで「枯渇」に修正。大型建設事業や公共施設更新の集中、物価高騰などで財政負担が想定以上に膨らんだ。 4 公立学校施設整備補助、短期での転用に交付要件の厳格化を求める(財務省) 2012~24年度に補助を受けた施設のうち277件が10年以内に処分され、85件は5年未満。廃・休校が多く、将来の児童生徒数を見込まない整備もあった。補助金も税金であることが忘れられていないか。 5 行政視察受入を有料化。2時間5千円、以降1時間毎5百円(静岡県長泉町) 視察対応の人件費相当額として料金を設定。実際の人件費には遠く及ばないが、収入確保(年間5万円)より、視察対応にもコストが生じることを明確にした形。お金を払ってでも見たい「売れる政策」を作れるか。 財ラボ Vol.23|information information|オンライン講演会財政課の仕事を変えると、自治体の仕事が変わる ― 予算査定・事業評価・業務改善をつなぐ ― 「自分たちの自治体を少しでも良くしたい。」 その第一歩は、既存事業を薄く削ることではなく、予算要求の背景にある業務を分解すること。 すると、他部署との重複が見え、しっかりとした事業評価ができ、打ち手の選択肢が増え、予算を通じた組織構造の改善にもつながる。 これは財政課だけでなく、事業評価や業務改善に関わる全ての方に、きっと通じる視点です。
財ラボ Vol.23|TIPS集 財ラボ厳選TIPS集|秋の予算編成スタート!査定・執行管理の基本TIPS1. 査定での「NO」は理由を添えて論理的に予算査定で原課の要求を削る際、単に「財源がない」と突き放すのはNGです。類似事業との統廃合の提案や、総合計画上の優先順位など、客観的で論理的な理由を添えてフィードバックすることで翌年度以降の要求の質向上につながります。 2. 新規事業の裏に潜む「ランニングコスト」新規事業の要求査定では、初年度の導入経費だけでなく、次年度以降に発生する保守料やシステム運用費、人件費などのランニングコストを見落とさないことが重要です。数年先の推移やトータルコストもセットで要求資料に記載してもらいましょう。 3. 決算を次年度の査定に持ち込む10月ごろには、多くの自治体で前年度の決算実績が見えてきます。査定で理由を示すとき、いちばん強い材料は昨年度の実績です。いくら使ったかに加えて、その事業で何がどう変わったかを一行添えてもらうだけで、断る側も通す側も同じ土俵に立てます。 財ラボ Vol.23|財オタ深掘りメモ 財オタ深掘りメモ|予算を付けなかったらどうなるの?元足立区 定野 司 さん 財政課の悩みナンバーワン! それは事業の見直しが進まない。 財政課や行革推進課が主導しようとしても、ノウハウもスキルも原課にあるので、何を言っても、のらりくらり。 原課にしてみれば、利害関係者との外部調整に踏み込むより、財政課との内部調整の方が容易と考えているからです。 そこで私は、「この予算を付けなかったらどうなるの?」と問いかけました。 「どんな効果があるの?」という問いでは、希望的な見通しばかりで要領を得ません。 ないと困ることを原課に立証してもらうのです。 ルールはひとつ。 これまであったからという理由は受け付けない。 2024年度、某学校法人が公立小学校の跡地に中学校を建設しました。 玄関にあるはずの下駄箱がない!どうして?いぶかしがる私に、彼らは言います。 「ないと困りますか?」学校には下駄箱があるものという先入観が、私の目を曇らせていたのです。 下駄箱の代わりに本箱が置かれました。 蔵書7400冊。 独立した図書室を設けずに済みました。 校長室も事務室もありません。 「ないと困りますか?」教職員がひとつの部屋にいるので、情報は「顔色」で伝わります(嘘です)。 しかし、打ち合わせと称する会議は減り、個別の部屋が不要になったので、必要な施設面積も抑えられました。 学校給食には、アレルギー事故や異物混入、調理員の熱中症など、さまざまなリスクがあります。 同校では給食を実施しないため、調理室もありません。 プールもありません。 その分、運動場を広くとることができ、光熱水費も従来型の学校施設に比べて半分程度に抑えられたといいます。 「ないと何が困るのか」を徹底して問い直せば、事業の見直しはここまで進むのです。 なぜ彼らは、ここまで見直すことができたのでしょうか。 この学校は私立で、限られた財源を何に使うかが学校運営に直接跳ね返ります。 だから、「あるのが当然」ではなく、本当に「ないと困るのか」と問うことができるのです。 この学校の体育館には舞台がありません。 舞台が必要なのは、入学式と卒業式、それに文化祭の発表のときくらいです。 そこで、必要なときだけ仮設の舞台を設置します。 目的を果たすために、恒久的な設備まで持つ必要はないということです。 「最少の経費で最大の効果を挙げる」を法律上の理念にとどめず、原課自身が「ないと困るのか」「困るとしても、今の方法でなければならないのか」と問うことこそ、事業の見直しの近道なのです。 元足立区 定野司。1979年足立区に入区。財政課長時代の2002年に包括予算制度を導入。2022年、財ラボ代表理事就任。主な著書に「自治体の財政担当になったら読む本」(学陽書房)などがある。 まだ登録がお済みでない方は、こちらから 自治体職員の方 財ラボ会員登録(入会費・年会費なし、永年無料) 会員限定の財政の知恵袋「給湯室ー財ラボ実務提要ー」には、会員からの回答はもちろん、行財政の第一人者「財オタ」や財ラボ上席研究員もお答えします。 正解のない問いに、実務目線の視点が集まります。 ほかにも、専門誌のバックナンバー、アンケート調査結果、講演会のアーカイブ動画など、会員限定ページの全コンテンツをご利用いただけます。 |
